ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「アレって?」
不思議がる私の体を起こした聖斗は
散らばった服を拾い上げ
まるで子供にそうするみたいに
私に服を着せてくれる。
「寒くないか?」
そう言った聖斗の体の方が
ずっと冷たいのに…
「平気だよ…」
そして、自分もトレーナーを着ると
立ち上がり
雑然とした荷物の中に入って行く。
「あれは…
俺が高校に入学して、すぐの時だ…」
聖斗が高校生になった頃…?
私と余り話しをしてくれなくなった時期だ…
「智可の兄貴の雅史とツレになって
休みの日、アイツが釣りに行こうって言ってきた。
俺は竿も、釣り道具も持ってなくて
親父のを拝借しようと思った。
親父は釣りが好きだったろ。
俺たちもガキの頃は
よく親父に釣りに連れてってもらったの覚えてるか?」
大きなダンボール箱をどかし
どんどん奥へと進む聖斗
「うん、覚えてる。
でも伯父さん、竿とか凄く大事にしてて
私たちには触らせてくれなかったね」
「あぁ、だから
親父に見つからない様に
皆が寝静まった夜中に、ここに来たんだ。
でも、ここに来て
荷物をどかしたりしてたら
懐かしい物が、やたら出てきて
俺は竿のことなんか忘れて
そっちに夢中になってた…
昔、集めてたカードとか
出来損ないのプラモとか…
そして…
アルバム…」
「アルバム?」
聖斗は、数冊のアルバムを手に戻って来ると
私の前に腰を下ろす。
「ほら、これ見ろよ。
美羅の赤ちゃんの時のだ…」
「あっ…、懐かしい…」
ピンクのアルバム…
遠い過去の軌跡が
一枚、一枚の写真となって現れる…
「ママ…パパ…」
幼い私を抱いたママ
その姿に微笑みを向けるパパ
その写真を指でなぞると
失った幸せだった日々が思い出せれ
胸が熱くなる…
「でも、どうして聖斗は
このアルバムを私に見せるの?
なんの意味があるの?」
すると、聖斗は
最後のページに貼られた写真を指差して言った。
「ここに写ってる3人…」
「…3人が?何?」
「…誰だか分かるよな」