ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
--- 3月1日 ---
高校卒業式
久しぶりに制服に身を包む。
高校生、最後の日
あの事実を知った日から
私と聖斗は
微妙で、曖昧な関係が続いていた。
抱きしめてくれるけど
キスは無い…
お互い、想い合ってても
求めることは許されない…
羽根をもがれた小鳥の様に
飛べない空を眺め
自由だった過去を
羨む日々…
何も知らなかった頃に戻りたい…
「行ってきます」
伯母さんに声を掛け
玄関の扉を開ける。
見慣れた通学路が
ヤケに新鮮で
普段、目に留まることのなかった
様々な街の景色に心が揺れる。
窮屈なバスを降り
校門へと急いでいると
後ろから懐かしい声がした。
「久しぶり…」
あ…
「上杉君…」
ほぼ、一ヶ月ぶりに見る上杉君は
とても大人びて見えた。
「今日で終わりだな…」
「うん」
あんな酷いこと言って、別れたのに
私に笑顔を向けてくれるんだね。
「ごめんね…」
「朝っぱらから
暗い顔すんなよ。
それで…聖斗ってヤツとは
ウマくいったのか?」
「う…ん」
本当のことなんて言えない…
上杉君の前では
私は幸せそうな顔してなきゃダメなんだ…
「聖斗と…付き合ってる」
「そうか…良かったな」
並んで歩く上杉君の肩が
少し触れただけで
涙が出そうになる。
「美羅、今更だけど
これ…貰ってほしい…」
そう言って手渡されたのは
ガラス細工のストラップだった…
「ちょっと遅くなったけど
誕生日…おめでとう」