ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

慌しく用意を済ませ
名残惜しむ間もなく車に乗り込む。


「下宿までは2時間はかかるわね…
その前に市役所に寄って
手続きしないと…
えーと、転出届けと
住民票記載事項証明ね…」


後部座席の伯母さんが
独り言の様にブツブツ言ってるのを聞いて
ハッとした。


市役所に行けば
アノことが確認できるかも…


…聖斗の出生の秘密…


戸籍を調べれば
聖斗が本当にママの子供なのか
知ることができるんだよね…


でも、伯母さんの手前
聖斗の戸籍を取ることは無理だな…
それなら
私の戸籍を見れば
なんらかの手がかりがあるかも…


そうだよ。
聖斗がママの子供だって証拠は
あの手紙だけ。
私たちが勝手に、そう思ってるだけだもん。


もしかしたら
私たちは兄妹じゃないかもしれない。


そうしたら
別れる必要なんてない。
恋人同士に戻れるかも…


私は必死だった。
聖斗を失いたくなくて
欠片ほどの望みに縋りたかったんだ…


「あの…伯母さん。
私の戸籍謄本、欲しいんだけど…」


カウンターで手続きをしている伯母さんに
小声で言ってみた。


「戸籍…謄本?
大学の提出書類に謄本なんて入ってたっけ?」

「うぅん。
私が持ってたいだけ…」


明らかに不審な表情を見せる伯母さん。


「そんなの、何するの?」

「別に…ただ、今まで見たことないから
どんな物かと思って…
ダメかな?」

「……」

「ダメなら…仕方ないけど…」

「…美羅ちゃんが、どうしてもって言うなら
構わないわよ…」


気乗りしない感じだったが
伯母さんは、渋々私の謄本を取ってくれた。


「ごめん。
ちょっと、トイレ…」


謄本を受け取った私は
急いで市役所のトイレに駆け込む。


心臓が、口から飛び出しそう…
2度、3度と
大きく深呼吸をすると
薄緑の封筒から
戸籍謄本を取り出す。


お願い…
どうか、聖斗の名前がありませんように…






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