ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

深刻そうな話しに
聞き耳を立てると
どうも、卒業後は伯父さんの薬局で働くことになってた優斗が
勝手に製薬会社の就職を決めてしまってたみたい。


「俺、研究とかしたいんだよ。
新薬の開発とか…
その製薬会社は、アルツハイマーの研究に熱心で
凄く興味あって…

お願いだから
就職させてくれよ」

「そんな自分勝手なことを…」


伯母さんは怒り心頭って感じ


すると
ずっと黙ってた伯父さんが
「やりたいことがあるなら
やってみなさい…」
そう言った。


「お父さん。
何言ってるの?」

「優斗の人生だ…
好きなことやらせてやろう。
聖斗だって居るんだ。
アイツなら薬局を継いでくれるよ」


聖斗なら…
そうだね。
聖斗なら、きっと断らないね…


なんだか聖斗が
凄く可哀想に思えた。
自分のやりたいことも我慢して
伯母さんに恩を返そうとしてる。


そんな聖斗の辛い思いなんて
誰も知らない…


やり切れない思いが
胸を締め付けた。


その時だった…


バタン!!


「ただいま」


聖斗が、帰って来たんだ。


「あら?聖斗…
あなた、帰りは遅いって言ってなかった?」


伯母さんが驚いて
リビングを覗き込む。


「んっ?あ、あぁ…
予定変更」

「そう…」


1年ぶりに会う聖斗。
前よりずっと、ステキで眩しく見えた。
でも、私はそんな聖斗を直視することができない。


聖斗も多分そうなんだろう
私が居ることを分かっているはずなのに
決して、こちらを見ようとはしない…


これが、現実なんだよね…


私は静かに立ち上がった。











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