ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「じゃあ、行ってくるわね」

「はーい。行ってらっしゃい」


その日は伯父さんの入ってる
薬剤師会の食事会だそうで
夫婦同伴が恒例らしく
伯母さんもお洒落して出かけて行った。


1人で夕食のカレーを食べ
お風呂に入る準備をする。


何が大変って
お風呂が一番厄介だ。


服を脱ぎ
ギプスが濡れない様に
ゴミ袋をかぶせ
お湯が入っちゃいけないから
袋の口と足をガムテープで
グルグル巻きにする。


今までお風呂に入る時は
伯母さんに手伝ってもらってたれど
今日は初めて1人でチャレンジだ…


左足でピョンピョンしながら
湯船まで行き
なんとか浸かれた。


そろそろ体を洗おうと
左足だけで踏ん張り
両手に力を込め
なんとか立ち上がった。


湯船に腰を下ろし
ゆっくり…ゆっくり…

ツルッ…

えっ…うそ…


「キャーーーッ」

バタバタ…ガシャーン!!


湯船に腰掛けていたお尻が滑り
とっさに立てかけてあった
蛇腹のお風呂のフタを掴んだものだから
それが体の上に倒れてきて
悲惨な状態。


「痛ったーい…」


情けなくて涙が出そう…


すると…
駆けて来る足音か聞こえたと思ったら…


「なんだ、今の音?」


ゲッ…聖斗?


「美羅!どうした?」

「ああぁぁぁ…聖斗…開けないでー」


バターン!!


開けないでって…言ったのに…


「はぁ?風呂のフタなんか抱かえて
何遊んでんだ…美羅…」

「遊んでなんか…ないよ」


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