ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

松葉杖をつき
リビングに行くと
聖斗がキッチンで夕食のカレーを
暖めていた。


「あ…聖斗。私がするよ」

「いい…美羅は座ってろ。
これくらい俺にだってできる」


振り返る事無く
そう言う聖斗の背中が
たまらなく愛おしい…


「あの…それと
ロールケーキ、ありがとね。
美味しかった」


すると聖斗は振り返り
「そうか」って、ニッコリ笑った。


「あんな遠いとこまで買いに行ってくれなくて
よかったのに…」

「ん?ドライブがてら
ついでに買ってきただけだ。
気にすんな」


ドライブがてら…?


「もしかして…
デートだったの?」

「…そんなんじゃ…ねぇよ」


否定した声は
とても小さかった。


そうだったんだ…
そうだよね。
ちょっと冷静に考えれば分かることなのに…


彼女とドライブして
彼女の為にケーキ買って
私のはそのついで。


往復2時間も掛けて
わざわざ私の為に買いに行ってくれる訳ないよね。


「別に隠さなくてもいいよ。
その人とは、もう長いんでしょ?
ホントに好きなんだね…彼女のこと」


平気…
私は平気…
絶対、泣かない…

ちゃんと笑えてるでしょ?


「美羅…それは…」


ピンポーン!!


聖斗が何か言いかけた時
玄関のチャイムが鳴った。


もう9時過ぎだ…
こんな時間に誰だろう…


聖斗が眉を顰め玄関に向かう。
お客さんは男性の様で
暫くの間、2人が何か話している声が聞こえていた。


ソファーに座り
テレビをつけようと
リモコンを手にした…その時


「こんなもんで済むと思ってんのか!!」


聖斗の怒鳴り声が
リビングにまで響いてきたんだ。


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