ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

私は驚き
慌てて玄関を覗くと
40代くらいの男性の胸ぐらを掴み
怖い顔をした聖斗の姿が見えた。


「美羅はな!
大事な女なんだ!
ヘタすりゃ死んでたんだぞ。
こんな安物の見舞いで許してくれだぁ?
ふざけんな!!」


聖斗の足元には
大きなフルーツの盛りかごが転がってる。


この人、もしかして事故の相手の人?


「すみません…
決して、こんな物で済むとは思ってません。
病院に行ったら
もう退院されたって…

下宿にお邪魔したら
実家に帰られたと聞きまして…
一言お詫びが言いたくて
夜分、失礼かと思ったんですが…

本当に、すみません…」


この人、車で2時間もかけて
謝りに来てくれたんだ…


「美羅の足が元に戻らなかったら
どうしてくれる?」


聖斗の怒りは
まだ治まらない。
これじゃあ、この人が可哀想…


「聖斗、止めて。
この人は悪くないの
私が飛び出したから…
こんなに心配してくれて
謝ってくれてるじゃない…」

「美羅は黙ってろ!!」

「イヤ!黙んない。
私のせいなんだから…
お願い、酷いこと言わないで」

「こんな目に合わされて
コイツをかばうのか?」


聖斗の握りこぶしが
ワナワナと震えてて
今にも男性を殴りそう…


「どうぞ、気が済むなら
殴って下さい…」


男性の力無い言葉に
居たたまれない表情を見せた聖斗は
「うるさい!!勝手にしろ!!」
そう言って、男性を掴んでいた手を放し
一気に階段を駆け上がって行く。


「すみません。
大丈夫ですか?」

「いえ…お詫びのつもりが
かえって気分を悪くさせたみたいで…
すみません」


男性はその後も
私に何度も頭を下げ帰って行った。


聖斗…
怒っちゃったよね…


聖斗のことが気にかかり
私は2階の彼の部屋へ向かった。


「聖斗?」





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