ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

勢い良く立ち上がったものだから
松葉杖が絨毯に引っ掛かって
前のめりに倒れそうになった。


「ああぁぁ…」

「美羅!!」


後ろから私の腰にまわされた腕
同時に、もう片方の腕が
上半身をしっかりと支えてくれた。


「聖斗…」

「バカ、無茶すんな…
危なっかしいヤツだな…」


ドジな自分が情けなくて
とっさに聖斗の腕から
逃げようと体を捻ったけど
聖斗の腕はビクともしない。


「聖斗、離して」

「嫌だ…」

「離してよ…
こんなことしたら彼女に怒られるよ」

「離さねぇ…」

「同情されたくないの…
可哀想だなんて、思われたくない」


強がってみたけど
涙は止まることなく
次から次へと
雫となり零れ落ちていく。


「同情なんかじゃねぇよ…
俺だって…ホントは美羅のこと…」

「……!!」

「女とは、別れる…」

「えっ…?」

「美羅が事故にあって、意識が無いって聞いた時
俺は後悔したんだよ。
こんなことなら
美羅を放すんじゃなかったって…

たとえ兄弟でも
未来が無くても
俺の側に置いておけば良かったって…

精一杯
愛してやれば良かったって…」

「せい…と…?」

「俺にとって
美羅がどれだけ大きな存在だったか分かったのに
お前には彼氏が居る。

もう、俺を必要としてないって
勝手に思ってた」

「そんなこと…」


さっきよりも
強く私の体を抱く聖斗の腕に触れ
その手に力を込める。


私だって、そう思ってた。
聖斗には必要とされてないんだと…
邪魔者なんだって思ってた。


「もう、遠慮なんてしねぇからな!!」







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