ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「違う…違うんだよ…美羅」

「違うって…何が?」

「薫は…あんたのママは…
聖斗を産んで…ない」

「…えっ?」


京子さんの言葉を理解するのに
数分の時間が掛かった…


「ママが聖斗を産んでないって…
どういうこと?」


強張る体
高鳴る鼓動
口の中がカラカラに乾いて
声がかすれる。


「薫の子は…
産まれてこなかったんだよ…」

「……」

「お腹の子が7ヶ月を迎えようとした時
薫は流産した…」

「うそ…」

「嘘じゃない!!」

「じゃあ…じゃあ
どうしてママは聖斗を返してって
伯父さんに手紙を送ったの?

京子さん、見て!!
この手紙には
ママが聖斗を産んだって書いてあるじゃない!!」


取り乱し、詰め寄る私を
京子さんは
息ができない位
強く抱きしめてくる…


「美羅…落ち着いて…
ちゃんと話すから、落ち着くの!!」


分かってる…
分かってるよ…京子さん。
私は冷静だよ…


でも、体の震えは止まらず
いくら空気を吸い込んでも苦しくて
高ぶる感情は私の意識を朦朧とさせる。


「いい?美羅、離すよ」

「…うん」


私を抱きしめていた手を緩め
京子さんは立ち上がると
「待ってなさい」と言って部屋を出て行く。


頭の中は真っ白
何も考えられない…


暫くして、戻って来た京子さんは
一枚のハガキを
私の手に握らせた。


「美羅、これが原因なんだよ…」

「これは…?」


そのハガキの裏には
可愛い笑顔の赤ちゃんの写真が印刷されていた。


「その赤ん坊はね
聖斗だよ」



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