ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

パパと結婚して
名古屋で暮らしてたママ。
心の傷は癒えたと誰もが思っていた。


でも、ママは本当に立ち直ってはいなかったんだ…
結婚して3年を迎えようとしてたのに
中々、子供が授からなかった。


それは、ママが望まなかったから…
また流産するんじゃないかと
ママは脅えていた。
そして、自分は母親になる資格は無いと
言ってたそうだ…


心配した京子さんとパパが話し合い
出した結論は、引越しだった。
あえて伯母さんたちの近くに引っ越すという
荒療治。


これは賭けだったと
京子さんは笑う。


「いつまでも逃げちゃだめだと思ったんだよ…
2人っきりの姉妹。
あの子たちが打ち解けて初めて
薫は救われると
私も智也さんも、そう考えたんだ」

「ママは納得したの?」

「そりゃあ~抵抗したさ!
でも、強引に引越したんだよ。
そして、あの家で全員が顔を揃えた」


そこで京子さんが心配したのは
聖斗のことだった。


「今の聖斗から想像できないかもしれないけど
あの子は小さい頃は
凄い人見知りでね。

初対面の人は警戒して
決して、心を許す子じゃなかった」

「へぇ~、信じらんない…」

「美津子にベッタリでね。
美津子の姿が見えないだけで
大泣きしてたんだよ」


聖斗、甘えん坊だったんだ。
なんだか可愛い。


「まぁ、仮にも一度は
自分の子だと思った聖斗に拒絶されたら
薫はまた、ショックを受けるんじゃないかと
皆、ハラハラしてた」


でも…
違ってたんだ…


伯母さんに抱かれていた聖斗は
ママを見ると
突然、立ち上がり、ママの方に歩き出した。


そして、ママの膝の上にチョコンと座ると
今まで誰が欲しいと言っても
あげることのなかった大好物のお菓子を
ママの口元に運び
ママに食べさせようとしたらしい…


そのお菓子をママが口に入れると
「おいちい?」と、ニッコリ笑い
ママも満面の笑みを浮かべ
「美味しいよ」と微笑んだ。


その笑顔を
今でも忘れられないと
京子さんは懐かしそうに呟く。


それがきっかけで
ママと伯母さんは
徐々に打ち解けていったんだ…

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