ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
どこをどう走ったのか覚えてない。
気がつけば
住宅街を抜け
この街一番の繁華街に来ていた。
奇抜いネオンが瞬き
いかがわしい店が立ち並ぶ。
酔っ払いが大声を上げながら
千鳥足で歩いてて
なんだか怖い…
この人たちは
お酒を飲んで嫌なことを忘れているのかな…
お酒を飲めば
さっきのこと
一時でも忘れられるのかな…
意識が無くなるほど飲んで
そのまま
死んでしまえたら
どんなに楽だろう…
ふと、大通りから外れた路地に
小料理屋の看板を見つけた。
若者が集まる騒がしい居酒屋なんて
入る気がしない。
ここなら…
私は覚悟を決め
のれんをくぐり
店の引き戸を開けた。
「いらっしゃい!!」
低く、太い声が
まだ誰も居ない店内に響く
「あのー、いいですか?」
「はい。どうぞ!!」
カウンターの中から
体格のいい男性がニッコリ笑って
軽く会釈する。
私はカウンターの隅の席に座り
「お酒…下さい」
と、声を絞り出す。
「熱燗でよろしいですか?」
「はい…」
差し出された徳利を手に持つと
小さなお猪口を無視して
グラスにお酒を注ぎいれ
それを、一気に喉に流し込む。
「お、お客さん!」
「すみません…
飲ませて下さい」
「はぁ…」
忘れたい…
何もかも、忘れてしまいたい…