ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
…なんだろう…
この匂い…
あぁ、鰹だしの匂いだ…
て、えっ?
慌てて目を開けると
見たことも無い部屋…
ここ、どこ?
なんで私、ここに居るの?
急に起き上がったせいか
こめかみの辺りがズキンと痛む。
それに、気持ち悪い…
部屋の引き戸の向こうは
キッチンみたいで
誰かが料理をしてる気配がする。
恐る恐る戸を開け
誰かを確認すると
どっかで見たような…
「おはよう。
と、言っても、もうお昼の2時だけど…」
「あぁ!!昨夜の板前さん?」
「そうだよ」
うそ…
どうして私、板前さんと一緒に居るの?
まさか…
私、この人と…
色んなことを思いめぐらしている私を見て
板前さんは、可笑しいと笑った。
「君、全然覚えてないみたいだね。
店の前で、大の字になって倒れてたんだよ。
かなり熱があったから
病院に行こうって言ったけど
そんなとこ行ったら
家に連れ戻される…とか言って
僕の服を掴んで離れようとしなくてね。
仕方なく
ここに連れて来たって訳」
うわぁー…
大失態だ…
「あぁぁ…す、すみません…」
「別にいいよ。
ただ、ちょっと、寝不足だけど…」
えっ!!
それって…
引きつる私の顔を見て
板前さんは、また可笑しいと笑う。
「変なこと考えてない?」
「あ…いや…」
「僕は君になんにもしてないからね。
寝不足の原因は、君のイビキ。
そりゃ~凄かった…」
「…イビキ?」
あぁ…
私、最低な女だ…