ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
自分が情けなくて、自己嫌悪…
「食欲ないかもだけど
なんか食べないとね。
雑炊作ったから、そこに座って」
「あ、はい…」
言われるまま椅子に座ると
美味しそうな雑炊が
私の前に置かれた。
「それ食べたら帰りなさい」
「えっ…」
「事情があるみたいだけど
家の人も心配してるはずだよ。
何度も携帯鳴ってたし
帰った方がいいよ」
携帯が鳴ってた?
相手が誰だか
大体の見当はつく。
鳴ったのが分かってても
多分、出なかっただろうな…
それより
私、何やっるんだろう…
バカみたいに、お酒ガブ飲みして酔っ払って
他人に迷惑かけて…
そんなことしても
何も変わらないのに…
「ごめんなさい…」
「もういいから…食べて」
「はい」
薄味の雑炊が、とても美味しくて…
板前さんの心遣いが、堪らなく嬉しくて…
涙腺が緩む。
「…泣いてるの?」
板前さんが驚いて
私の顔を覗き込む。
「僕、なんか悪いこと言った?」
「いえ…」
首を大きく振り
下を向くと
ティシュの箱がスッ…と
私の視界に入ってきた。
「辛いこと、あったみたいだね」
その、優しい声と言葉に
一気に涙が溢れ
ポロポロと零れ落ちる。
「好きな人が…居たんです。
とても大切な人が…
でも、その人と他の女の人の間に子供ができて…
私…もう、どうしたらいいか分からなくって…」
「そう…そんなことがあったのか」
板前さんは、真剣な顔で
私の話しを聞いてくれた。
「でも、家には帰った方がいいよ」
「ダメなんです…
家には帰れない…」
「どうして?」
不思議だった…
全然知らない男性に
私は聞かれるまま
正直に自分のことを話してる…
普通なら
ありえないこと…
なんでだろう…
この人には、なんでも素直に話せてしまう…