ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「い、板前さん…?」

「僕は、昼から店に出る。
帰りは深夜だ…
この部屋には寝に帰って来るみたいなもんだ。

どこにも行くとこが無いなら
ここに居ればいい。

心配しなくても
僕は君に手を出したりしないよ」


信じられなかった…
見ず知らずの私を
どうして、そこまで…


でも、嬉しかったのも事実。
このまま、ここを出ても
行く当てなど無い。


智可に頼ることはできないし
恵美里は彼と同棲してて
転がり込む訳にもいかない。


「いいんですか?」

「あぁ、その代わり
掃除だけ頼むよ。
中々、手がまわらなくてね」

「…あ、有難うございます…」


再び部屋に戻ると
彼は部屋の鍵を私に手渡し
仕事に出かけて行った。


なんだか
変なことになっちゃったけど
取りあえず掃除しよう…


掃除機をかけ、床を拭く
少々頑張り過ぎたかな…
また、寒気がしてきた。


こたつに入り
暖まっていると
板前さんの言葉を思い出し
鞄から携帯を取り出す。


何度も鳴ってたって、言ってたよな…


携帯を開けると
着信が12件
メールが5件入ってた。


初めのは、ほとんどが智可からだった。
でも、最後の方は
聖斗からだった。


《美羅、帰って来てたのか?
何処に居る?
連絡してくれ》


《話しがしたい。
頼む、待ってるから》


聖斗…
何を話すって言うの?
別れ話し?
理絵さんの妊娠のこと?


そんなの聞きたくないよ…


私は全ての着信とメールを削除した…



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