ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
それから私と板前さんの
奇妙な同居生活が始まった。
「いつまで僕のこと
板前さんって呼ぶの?」
「だって、板前さんだもん」
「まぁ、そうだけど…
僕の名前は、黒木満(クロキ ミツル)
君の名前は?」
「私の名前は、み…みわ…
みわだよ」
本名を言えなかった。
咄嗟に私は偽名を名乗ってた。
板前さんには感謝してるれど
まだ信じきれてなかったんだ…
本当の名前を言ったら
家に連絡されるんじゃないかって
疑ってた。
「ふーん、みわちゃんか。
いい名前だ」
「ありがと。
それで、いた…じゃなくて、黒木さんって
幾つなんですか?」
「んっ?僕は36歳」
「えっ!!36歳?
もっと若いと思ってた…」
「へ~、それは嬉しいね。
で、みわちゃんは幾つ?」
「私は22歳」
「22歳かぁー…若くていいねぇ」
・・・
14歳も年上の黒木さんにとって
私は、ただの子供でしかなかったのかもしれない。
一緒に暮らしていても
彼は私を異性として
特別な目では見てない様だった。
だから私も
変に意識することなく
自然に振舞えていた。
私がこのアパートでお世話になるようになって
1週間が経った頃
いよいよ所持金は、底を突いた。
元々、そんなに持ってなかったし
靴や洋服、身の回りの物を買ったりしたから
もう、数百円しか残ってない…
今日は黒木さんはお休み。
お昼は、行きつけの喫茶店で
ランチをご馳走してくれると言ってくれた。
アパートから、徒歩10分
ビルの一階にある
こじんまりとした喫茶店。
店の名前は『シャルム』
ドアの前に立った時
一枚の張り紙に視線が釘付けになった。
『ウェートレスさん急募!』
ウェートレスさんか…
私でも、出来るかな…