ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
黒木さんの後に続き
窓際の明るい席に座ると
グレーのオールバックの髪を
後ろで結んだ
お洒落なおじさんがお水を持って
私たちのテーブルにやって来た。
「黒木君、いらっしゃい。
どうしたの?珍しいね。
黒木君が女性を連れて来るなんて」
「うん、まぁ、ちょっとワケありでね…」
私の顔を見ながら
黒木さんがクスッと笑う。
マスターお勧めの
Aランチを注文し
新聞を広げている黒木さんに
私は遠慮気味に声を掛けた。
「ねぇ、黒木さん。
私、ここで働かせてもらえないかな?」
「はっ?」
目を真ん丸くした黒木さんが
不思議そうに「どうして?」と、聞く。
「実はね…
もう、お金無くて…
このままじゃ、黒木さんのアパート出るにも
身動き取れないし…
それに、毎日暇で
何かしたくて…」
「そう…」
黒木さんは、少し考えていたけど
マスターに声を掛け
私のことを話してくれた。
黒木さんの紹介ならと
返事は、即OK!
早速、明日からお世話になることになった。
人と接するのが苦手な私は
大学時代のアルバイトは
なるべく目立たない裏方の仕事を選んでいた。
不安はあったけど
このまま黒木さんに頼ってばかりいられない。
店を出る前に
大まかな説明を受ける。
日曜と平日の午前は
他のアルバイトの人がが来るそうで
私は月曜から土曜のお昼1時から夜の8時まで
時給は850円
素性も分からない私を信用して雇ってくれたんだ…
黒木さんにも迷惑掛けない様に
頑張らないと…
喫茶店を出て、アパートに帰る途中
突然、黒木さんが寄るとこがあるから
先に帰ってくれと
居なくなっちゃった…
そして、1時間ほどして
小さな紙袋を手に帰って来た。
「どこ行ってたんですか?」
「うん。ちょっとね…」
なんか、変な感じ…