ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
私が家を飛び出した日以降
聖斗からの着信やメールは
頻繁に私の携帯を鳴らした。
でも、私は出なかった。
出ることが出来なかったんだ…
怖かった。
聖斗と向き合うことが
無性に、怖かった…
だから私は逃げたんだ…
3日もすると、携帯の充電も切れ
静かになった携帯。
今も、そのまま…
特に不自由はない。
それどころか、ホッとしてる。
これで聖斗を忘れられる…
住む家があって、働ける場所がある。
今の私は
それで十分満足なはず…
そう思ってるのに
涙が出るのは、なぜなんだろう…
一体、いつになったら
私は泣かずに、この道を歩けるんだろう…
どんなに泣いても
もう、聖斗の元には戻れないのに
聖斗は理絵さんのモノなんだ。
そして…
理絵さんのお腹の中にいる
赤ちゃんのモノ…
また、大粒の涙が頬を伝う…
この体に刻まれた
聖斗の記憶は、まだ鮮明に残ってて…
トロける様な、甘い魔法のキスも
抱きしめられた時の
あの、硬い胸板も
力強い腕の感触も…
全てが愛おしくて
忘れられない…
…こんなんじゃダメだ!
強くならないと…
そして、忘れないと…
唇を噛みしめ顔を上げると
真ん丸な青白い月が震える様に揺れていた。
明日は日曜日
私も黒木さんも仕事はお休み
このアルバイト代で
黒木さんに何かプレゼントを買おう。
そして、ちょっと贅沢な夕食を作って
彼と二人で食べよう。
精一杯の、感謝の気持ちを込めて…