ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
過去の過ち
次の日
私はお昼過ぎに買い物に行くと黒木さんに告げ
アパートを出た。
黒木さんへのプレゼントは
もう決めてるんだ。
彼は、ほとんど服を持ってない。
いつも同じ物ばかり着てる。
オシャレには無頓着なのかな…
気合を入れて
デパートまで来たんだけど…
男の人の服を選ぶのは初めてで
結局、無難な薄手のニットセーターになってしまった。
それなら夕飯は
グッと、豪勢にと
地下の食品売り場で
すき焼きの材料を物色。
お肉は奮発して、高級霜降り牛!
清算を済ませ
デパートを出ると
私は足早に駅へと向かう。
…この場所に、長居したくない…
人混みの中で
知り合いで出くわすことを恐れていたのもあるけど
一番の理由は…
あの日を、思い出してしまうから…
私の誕生日
聖斗と腕を組んで歩いた歩道
2人で食事したレストランが視界の隅をかすめる。
"ずっと、一緒"だと渡された
約束の指輪…
打ち消しても、打ち消しても
次々と思い出される幸せだった頃の記憶
やっぱり、ここに来るんじゃなかった…
この同じ道を、平気で歩けるほど
私は吹っ切れてない…
そう、私は聖斗と意外に近い場所に居る。
黒木さんのアパートから自宅までは
車を使えば、せいぜい15分ほど
この微妙な距離が、いけないのかな?
急いでアパートに帰ると
黒木さんは留守で
『シャルムに行ってくる』と、書置きがあった。
それなら、黒木さんが帰って来る前に
夕飯の支度をしておこうと
張り切って、キッチンに立つ。
でも…ヤダ…想定外!
すき焼き用の鍋が無い。
そうだよね…
男性の一人暮らしで
すき焼き鍋なんて無いよね。
冷静に考えれば分かることなのに…
仕方ない。
ちょっと、色気無いけど
フライパンで作るか…
見た目は、イマイチだけど
味は、最高!!
なんたって、高級霜降り牛だもんね。