ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
気づくと
私は、黒木さんの胸に顔を埋め
彼を抱きしめていた。
どうして、そんなことしたのか分からない。
ただ、無性に、そうしたかったんだ…
「みわちゃん、離して…」
「イヤ…」
「一時の感情で、こんなことしちゃいけないよ」
「違う…」
「みわちゃ…」
「違う!
私、黒木さんのことが…」
「それ以上、言っちゃダメだ!
みわちゃんは、勘違いしてる。
君は、好きな人のことを忘れる為に
僕のことを好きだと、思い込もうとしてるだけだよ。
もっと自分を大切にしなさい」
そう言って、私の頭を優しく撫でる黒木さん。
彼の言ったことは、正論かもしれない。
でも、私は本気で黒木さんと
ずっと一緒にここで暮らしたいと思った。
この気持ちに、嘘はない…
「私が、ここに居たら迷惑?」
「そんなこと…ないよ」
「私じゃダメ?
子供すぎて相手にならない?」
頭を撫でてた手が
何時しか私の肩を、しっかり掴んでいた。
「いいかい?
人はね、自分と同じ様な辛い体験をした人に出会うと
変な連帯感と言うか、親近感を持つそうだ。
その痛みが分かる分
放っておけなくなる。
実際、僕が君を引き止めたのも
きっと、そのせいだと思う。
みわちゃんは、まだ若い。
これから沢山の出会いが待ってるはずだよ。
僕なんかより
ずっと、いい人に出会って、素敵な恋をするはずだ」
「黒木さん…」
「今まで通り、いいね。
それが出来ないなら
この同居は解消だ…
出てってもらうから」
彼は大人だ…
私の考えてることなんて、お見通し
私は頷くしかなかった。
項垂れる私に、黒木さんは更に言葉を続ける。
「それと、もう一つ。
みわちゃんに、して欲しいことがあるんだよ」
「して…欲しいこと?」