ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「君の家に連絡して
元気にしてるってことを
ちゃんと家族に伝えること」
「えっ!それは…」
「きっと心配してるよ」
「でも、そんなことしたら連れ戻されるかも…」
「元気だってことだけ伝えればいいから
みわちゃんが家に帰りたくないなら
ここに居ればいい」
「うん…」
・・・
黒木さんと約束したけど
すぐには電話出来なかった。
一週間後、やっと決心がつき
少し早目にアパートを出て
『シャルム』に行く途中にある公衆電話から
家に電話することにした。
昼間なら聖斗は仕事だ。
家には伯母さんしか居ないはず。
呼び出し音が耳に響くたび
心臓の鼓動が速くなる。
『はい』
えっ?
『もしもし?』
うそ…
『もしもし?大原ですけど…どちらさん?』
この声…
『…もしかして…美羅か?』
どうして聖斗が出るの?
私は咄嗟に、受話器を戻そうとした。
でも、その時
耳を劈く様な聖斗の声が
私の手を止めた。
『切るな!美羅』
聖斗…
『切らないでくれ…頼む…
声を…聞かせてくれ』
「あの…」
『美羅…良かった…』
聖斗の声は、とても優しくて
それが私にとっては
何より辛かった。
「私は元気だから…心配しないで。
それだけ言いたかったの
じゃあ、切るね…」
『待て!今、どこに居るだ?』
「今…ね、彼氏と一緒に暮らしてるの…
同棲してる。
だから、私のことは探さないで」
『同棲?嘘だろ?』
「嘘じゃないよ、聖斗。
聖斗も理絵さんと仲良くやってるんでしょ?
あ、子供も産まれるんだよね…
良かったね。
おめでとう…」
精一杯の強がり…
泣いて、喚いて聖斗を責めたところで
私たちが以前の関係に戻ることは出来ない。
それなら
綺麗に別れよう
笑って"さよなら"って…
「幸せになってね。聖斗…
私も、幸せになるよ…」