ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
聖斗の言葉を待つ。
でも、聖斗は何も言ってくれなかったんだ…
これが聖斗の答え
そう悟った私は
震える手で静かに受話器を置いた。
必死で涙を堪える。
意地でも泣くもんかって
唇を噛みしめた。
『シャルム』では
いつも以上に明るく振る舞った。
でも、仕事から帰った黒木さんの顔を見たとたん
大泣きして彼を困らせてしまった。
ごめんね、黒木さん。
今日だけ泣かせて…
明日になったら、忘れるから
だから
今だけ、あなたの胸で泣かせて…
・
・
・
そして、穏やかな日常が続き
この生活にも慣れた6月の半ば
そろそろ梅雨入りの季節を迎えようとしていた
ある日…
『シャルム』に、思いもよらぬ人がやって来たんだ…
それは、もうそろそろ仕事も終わろうとしていた
8時前
店の奥で、明日のモーニングの仕込みをしてた私を
マスターが呼んだ。
「みわちゃーん
ちょっと来てくれる?」
「はーい」
お客さんが来たと思った私は
笑顔で店内に急ぐ。
「みわちゃんに会いたいって人が来てるんだけど…
えっと…大原さんて、男性…」
名刺を見ながらマスターが指差した
一番奥のテーブル
まさか…
聖斗が迎えに来てくれた…?
一瞬だけど、胸が躍った。
そんな自分に驚いて
グッと、息を呑む。
「美羅…美羅だよな…」
私に気付いたのか
か細い声が、私の本当の名を呼んだ…
「知り合いなの?」
マスターの言葉に小さく頷くと
私は、足を一歩前に踏み出した。
「探したんだぞ…美羅」
優しく安堵の表情を浮かべ
駆け寄って来る
懐かしい笑顔…
「やっと、見つけた…」