ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

でも、それは…
望んでいた笑顔じゃなかった。


「優斗…」

「何やってんだ。
皆どんなに心配してるか…
分かってるのか?」

「……」

「一体、何があったんだ?」


私が何故、家を出たか
優斗は知らないんだ…


「どうして、ここが分かったの?」

「今日、家の近所の人が薬局に来て
美羅に良く似た子が
この喫茶店に入ってくのを見たって
教えてくれたんだよ。

まさか、こんな近くに居たとはな…
驚いたよ。
とにかく帰ろう…」


私の手を掴み
ドアに向かって歩き出す優斗


「イヤ…離して…」

「美羅…」

「帰りたくないの…
帰れないの…」

「どうして?」

「好きな人が…居るの…
その人の傍に居たいの
だから、帰れない」


本当の理由は言えない…


「嘘…だろ?」

「ホントだよ。
お願い、私のことは放っといて!」


呆然と立ち尽くす優斗の手を振りほどき
私はその場に座り込む。


「美羅…」

「絶対、帰らない!!
ここに居る!!」


店内は異様な雰囲気が漂い
水を打った様に静まり返えった。


マスターが店に居た2人の常連客に何か耳打ちし
頷いたお客さんは
そそくさと店を出て行く…


「みわちゃん、何か訳があるんだろ?
もう店は閉めるから
その人と話しなさい」

「マスター…」

「私は裏に居るからね。
話しが終わったら声掛けて…ねっ?」


私の代わりに優斗がマスターに頭を下げ
床に座り込んでる私に手を差し出す。


「美羅、ちゃんと話そう…」

「……」


仕方なく立ち上がり
優斗と向き合って座った。


「どうして優斗が、ここに居るの?」

「…ん、あぁ…
俺、会社、辞めたんだ。
今はウチの薬局で働いてる」




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