ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「お、驚いてるよ…
ビックリして、言葉も出なかった…」

「そうか?」


優斗に変に思われるのが嫌で
「一週間したら、連絡するから…」と
私は慌てて話しをそらした。


納得した優斗は
店を後にし
私は店の奥に居るマスターに声を掛け
お詫びとお礼を言った。


「みわちゃん、本当の名前は
美羅ちゃんって言うんだね…」

「はい…
すみませんでした」


嘘ついて働いてたんだ
辞めさされても文句言えないよね…

そう思ったのに…


「美羅ちゃん
明日も来てくれるんだろ?」

「えっ?」

「名前なんてどうでもいいじゃないか
君は、君なんだから」

「マスター…」

「このことは黒木君には言わないから…
安心して、今まで通りここで働いてほしい」

「えっ…いいんですか?」


ニッコリ笑ったマスターに
私は深く頭を下げた。


「ありがとう…ございます」


肩を軽く叩かれると
その手の温もりが胸に沁みて
見る見る涙が溢れ出した。


・・・


でも…

ホッとしたのも束の間。


優斗から与えられた猶予は
一週間しかなくて
何も考えられないまま
時間だけが空しく過ぎていく…


もう、あの家に住むつもりはないけど
家に帰れば聖斗が居る。


どんな顔して会えばいいんだろう…
何を話せばいいんだろう…


平常心でなんか居られない。


聖斗も、きっと同じ思いだよね…





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