ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「話って何?
私、もう仕事行く時間なんだけど…」
畳の上に正座してる黒木さんの前に座りながら
そう言うと
彼は硬く目を閉じ
膝の上の手を血管が浮き出るほど強く握りしめた。
「『シャルム』には、もう行かなくていい」
「えっ?」
「マスターに君を辞めさせて欲しいって
今、頼んできた…」
「どうして…」
「君はもう、ここに居ちゃいけない。
家に帰るんだ」
訳が分からなかった。
どうして突然、そんなこと言うの?
「昨日、『シャルム』の常連さんに聞いたんだ…
みわちゃんを迎えに来た人が居たそうだね」
優斗のこと、バレてたんだ…
「黙ってたのは悪かったけど
私になんの相談も無く
勝手に辞めるなんてマスターに言うなんて
酷いよ」
「それだけじゃない…」
目を見開いた黒木さんが
私の顔を凝視する。
「何が…あるの?」
「みわちゃんは、僕と居ちゃいけない人なんだ…
君と一緒に暮らす資格なんて
僕には無いんだ」
「そんな…
一緒に暮らす資格って、何?
そんなもの必要あるの?」
首を擡げる様に
頷く黒木さん。
「この数ヶ月、みわちゃんと暮らせて
本当に楽しかったよ。
多分、僕の人生の中で
一番幸せな時だったと思う。
出来るものなら
このまま、君と暮らしていたかった。
でも、それはイケナイことなんだよ…
許されないことなんだよ…」
「理由を聞かせて!
どうして、イケナイの?
お互いが幸せなら
いいじゃない。
何がイケナイって言うの?」
納得できず
声を荒げる私に
黒木さんが告げた
その理由は、信じられないものだった…
運命とは、時に残酷で
私から大切なモノを
根こそぎ奪っていく…
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「…僕はね…
人殺しなんだよ…」