ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「ひと…ごろ…し?」


黒木さんの
その、思いもよらぬカミングアウトに
どんな反応を示していいのか分からず
不意に口を衝いて出た言葉は
「嘘、でしょ?」だった…


でも、黒木さんは静かに「本当だよ」と言って
私を見つめる。


「僕が20歳の時だった…
刑務所に3年入ってたんだ」

「えっ?3年?」


混乱してた私だったけど
殺人の刑が3年ということに疑問を持った。
そんな短い刑期で出て来れるんだろうか…


「あぁ、だから、みわちゃんは僕なんかと関わっちゃいけないんだよ。
こんな僕の傍に居ても、幸せになれない…」


違う…
違うよ…黒木さん


「そんなことない!!
黒木さんの過去に何があったか知らないけど
今の黒木さんは、とってもいい人じゃない。
私の恩人だよ!!」


彼の腕を掴み詰め寄る私の手を
黒木さんはゆっくり振りほどくと
首を横に振った。


「そんなこと…
そんな優しいこと、言わないでくれ…
みわ…いや、江川美羅さん」

「……!!」


私の名前…なぜ?
下の名前は、マスターに聞いたとしても
名字は誰にも言ってないのに…


「どうして、その名前を知ってるの?」

「…昨夜、君が風呂に入っててる時
悪いと思ったが、鞄の中を見たんだ。
保険証の名前は、江川美羅だった…」

「酷い!
勝手に人の鞄の中見るなんて
黒木さんらしくないよ」

「ごめん…
でも、どうしても確かめたいことがあって…」

「確かめるって、何を?」

「君が、あの時の子なのか、どうか…
確かめたかったんだよ」


話しが全然見えない…
もどかしさで、イライラが募る。


「あの時って、いつのこと?」


「13年前…
僕は君と、一度だけ会ってるんだ。
9歳の時の
江川美羅さんに…」





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