ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「美羅…」

「あの日…
家に帰った時
私、見ちゃったの…」

「見たって…何を?」

「聖斗が…私以外の女性を抱いてるとこ…」

「ぐっ…」


京子さんは、むせながら飲みかけのコーヒーを
口元から離す。


「美羅、あんた…
それで家出を?」

「それだけじゃないよ。
聖斗は彼女のお腹の赤ちゃんを気遣ってた。
そんなの見せられたら
聖斗のこと、信じることなんて出来ないよ…」

「じゃあ、あのことは?
あんたたちは兄妹じゃないってこと
聖斗には、まだ言ってないの?」

「うん…」

「ハァ~…」


呆れたと言わんばかりに
京子さんは溜息をつく


「もう、そんなこと
どうでいいの
今更事実を話した所で
何も変わらない…

聖斗は理絵さんと結婚して
パパになるんだよ」

「本当に、それでいいの?」


いいワケない。
でも、そう思うより他ない。


「いいよ…
それが、私と聖斗の運命だったって
受け入れるしかない…」

「そう…
でも、兄妹じゃないってことは
聖斗に教えてあげなさい。

あの子だって苦しんできたんだ。
そのことは、美羅が一番よく知ってるだろ?
それとこれとは別問題なんだから」


「そうだね。
でも今は…」


言えない…
言う気になれない…


「…本当に兄妹だったら…良かったのに…」

「美羅?」

「そうすれば、もっと簡単に
聖斗を忘れられたかもしれない…」


独り言の様に呟く私の顔を
京子さんは哀れみの目で見つめていた。


「それで、美羅はこれからどうするつもり?
同棲してた男のとこに戻るなんて
言わないでおくれよ」

「暫くは家に居る。
伯母さんが元気になったら
ちゃんと話しして…
家を出る」


それが一番いい選択だと思った。





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