ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
苦悩
病室に戻ると
聖斗の姿は無く
優斗と、眠りについた伯母さん2人だけだった。
「あら?聖斗はどうしたの?」
京子さんの問いかけに
優斗が小声で
「奥様からの呼び出しで帰ったよ。
入籍の相談らしい」
と言って、笑う。
慌てて話題を変える京子さん。
どんどん憂鬱になっていく…
ここに居れば
これからもっと聞きたくないことも
見たくないモノも
笑って受け入れなくちゃいけなくなる。
早く黒木さんの所に戻りたい…
聖斗の居る家には
帰りたくないよ…
・・・
「本当にいいのか?美羅」
「うん、大丈夫」
だから私は、伯母さんの付き添いを
買って出た。
そうすれば
聖斗の居る家に帰らなくて済む。
「じゃあ、なんかあったら電話してくれ
すぐ来るから…」
「分かった」
優斗と京子さんを見送ると
伯母さんの眠るベットの横に座り
ぼんやりと
降り出した雨を見つめていた。
入籍か…
いよいよ手の届かないとこに行ってしまうんだね
聖斗…
私、笑顔で"おめでとう"って言えるかな…
でも、言わなきゃいけないんだよね
「んんっ…」
「伯母さん?起きた?」
「あぁ…美羅ちゃん…
居てくれたんだね」
「うん」
「美羅ちゃんが帰って来てくれて
本当に、良かった…
このまま見つからなかったら、どうしようって思ってた。
薫から預かった
大切な娘なのに
もしものことがあったらって
気が気じゃなかったのよ…」
「伯母さん…
ごめんなさい…」
「もう、いいよ。
帰って来てくれたんだもんね。
それだけで伯母さんは満足だから…」
伯母さんのやつれた笑顔を見て
初めて
自分のした軽率な行動が
どれほど皆に迷惑を掛けたことなのかが
理解できた。
本当に、ごめんね
伯母さん