ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「来ないで!!」
「美羅、濡れるだろ」
「放っといて!!」
聖斗に掴まれた腕を
力一杯振り下ろす。
でも、反対に聖斗の胸に抱き寄せられた…
「美羅…すまない…」
「イヤ!離して!」
「こんなことになるなんて、思ってなかったんだ…
結婚なんてするつもり無かった。
俺の気持ちは変わって…」
「聞きたくない!!」
顔を上げ、雨に打ちつけられながら
聖斗を睨みつける。
「美羅…」
雨音にかき消されそうな
小さい声と、悲しそうな瞳。
お願い…
そんな目で私を見ないで…
「家に帰ろう…」
「そんなの無理!
伯母さんを一人に出来ない」
「こんなズブ濡れで病室なんて行けないだろ?
お袋が変に思う…」
そう言うと聖斗は私の手を引き
病院の入口へと歩き出す。
夜間受け付けの窓口に居る男性に
「A棟3階のナースステーションに
電話通じますか?」と、尋ね
繋がった電話で
今晩だけ付き添いが出来ないと
丁重に伯母さんのことをお願いしてる。
その間も
聖斗は私の手を痛いくらい強く握ってた。
「行くぞ」
「でも…」
「いいから、来い」
強引に引っ張られ
車に乗せられた私は
なるべく聖斗と距離を取ろうと
助手席のドアにもたれ掛り
小さな抵抗を試みる。
そんな私を
聖斗はため息混じりに見つめると
軽く首を振り
アクセルを踏み込んだ。
暫くの沈黙の後
聖斗が口を開いく。
「どんな男なんだ?」
「えっ?」
「同棲してたヤツだよ…」