ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

車に戻り
何も考えられないまま
ぼんやりアパートを見上げていると
優斗が心配そうに
私に声を掛けてきた。


「大丈夫か?美羅」

「……」

「黒木さんは、美羅にとって
そんなに大切な人だったのか?」

「…大切な…人だよ。
彼が居なかったら、私…
生きてなかったかもしれない…」


それまで優しい表情だった優斗の顔が
引きつるのが分かった。


「黒木さんじゃないと、ダメなのか?」

「…えっ?」

「俺じゃ…ダメなのか?」

「どういう…意味?」

「あ、イヤ…なんでもない…」

「ゆう…と…」


多分、この時からだと思う。
優しいお兄さんだと思ってた優斗も、一人の男性なのだと
意識しだしたのは…


「これからどうする?
家に帰るか?」

「あ…、じゃあ、病院に連れてって」

「病院って…
今日は聖斗が行くから
美羅は行かなくていいんじゃなかったのか?」

「うん。
でも、やっぱり伯母さんのこと心配だし
聖斗じゃ、伯母さんも頼み辛いことあるかもしれないし」

「そうか…」


それも理由の一つだったけど
家に居たら
きっと、黒木さんのこと考えちゃう…


病院で伯母さんのお世話してる方が
何も考えずに済む気がしたんだ。




「ありがとう…じゃあ」

「うん、あんまり無理するなよ」


優斗の車を降り
伯母さんの病室へと急ぐ。


4人部屋だから
この時間は着替える人とかいて
ベットの間のカーテンは
閉められてることが多い。


この日も、伯母さんのペットを囲む様に
カーテンが閉められていた。


微かに聞こえてくる会話
聖斗と伯母さんだ。


そっとカーテンに手をやると
もう一人
若い女性の声が聞こえてきた。


「お義母さん。
早く元気になって下さいね」


お義母さん…?


「そうよね。
早く元気にならないと
初孫のお世話も出来ないものね」


嬉しそうな
伯母さんの声


まさか…理絵さん?




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