ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
それは、まるで
私がこの家を出て行くのが当然だと
言われてるみたいだった。
突然、聖斗が立ち上がる。
「理絵、そろそろ帰った方がいい。
送ってく」
「えっ?もう?」
「今日は病院にも行って、疲れたろ?」
すると優斗が、穏やかな口調で理絵さんに話しかけた。
「理絵さん
その心配は無用だよ。
美羅はどこにも行かない。
この家に居る。
その、同棲してた彼とは
別れたから」
「えっ?」
声を上げたのは、聖斗だった。
「別れた?ホントか…美羅」
「うん…」
「どうして?」
我を忘れたみたいに
私に詰め寄る聖斗の腕を理絵さんが引っ張る。
「帰る…送って、聖ちゃん」
「美羅、答えろ!!
なんで別れた?」
「あ、それは…」
「聖ちゃん、何ムキになってんのよ。
私、帰るって言ってるじゃない!!」
理絵さんを無視し
尚も私に別れた理由を求める聖斗をいさめたのは
優斗だった。
「落ち着け、聖斗。
美羅は、俺と付き合ってるんだ。
だから
どこにも行かない」
私と優斗以外、全員が驚きで愕然としてる。
「兄貴と…美羅が…?
嘘だろ?」
「嘘なんかじゃないよ。
なぁ、美羅」
私の方を向き
ニッコリ笑う優斗
そうだ…
優斗とのこと認めるのが
聖斗を忘れる一番の方法なのかもしれない…
聖斗への決別の意味を込め
私は「…うん」と、答えた。
「ありえねぇ…」
「俺と美羅が付き合うことが
そんなに驚くほど、不自然なことなのか?」
「当たり前だ…美羅だぞ?
妹同然じゃねぇかよ!
それを…」
「でも、妹じゃない」
優斗の、その一言を聞いて
聖斗は唇を噛み
眉間にシワを寄せる。
優斗にとっては
何気ない言葉でも
この時の聖斗にとって
それは、余りにも残酷な言葉だったのかもしれない…
聖斗は、まだ
あの真実を知らない…