ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「…ゆう…と…」
素早く私の元に駆け寄って来た優斗は
言葉より先に、私を抱きしめてくれた。
「大丈夫か?美羅」
「どうして…?優斗」
「携帯に電話あって…
理絵さんのこと聞いた。
美羅のことが心配で
急いで帰って来たんだ…」
「優斗、私…何もしてない…」
「分かってる。
美羅が理絵さんを突き飛ばす様なこと
する訳ない!
俺は美羅を信じてる。
美羅はそんなことする子じゃない」
「あっ、うぅっ…ゆう…とぉー」
優斗は信じてくれるんだね…
私のこと、信じてくれるんだね…
更に強く抱きしめてくれる優斗の優しさに
再び涙が溢れる。
「理絵さんは、なんともないそうだ。
今晩は様子を見るのに入院するそうだけど
明日には帰って来れるって
だから美羅は
何も心配しなくていいんだよ」
「ホント?」
「あぁ…」
理絵さんの無事を聞いて
体の力が抜ける。
「良かった…」
でも、それと同時に
さっきの聖斗の冷酷な顔を思い出す。
聖斗はきっと、私が理絵さんを突き飛ばしたと思ってるよね…
私のこと
恨んでるよね…
大切な自分の子供を危険な目に会わせたって
怒ってるよね…
もう、本当に終わりだ…
本当に、本当に、終わりだ。
____ あの夏の日…
幼い時の、夏の思い出…
聖斗は言ったよね。
ずっと、私の傍に居るって…
聖斗の嘘つき。
約束破ったのは、聖斗だよ。
もう、あの約束は
あの日の波間に漂う泡の様に、消えちゃったんだよね…
「…優斗」
13年前の夏
私の震える体を抱きしめながら
聖斗が
決して言うなと言った言葉…
「私、優斗の…」
もう…言ってもいいよね?
「お嫁さんに…」
誰よりも、愛してたけど…
「…なる」
終わりにするね…聖斗
終わりに…するね…