ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

京子さんの話しを聞き終えた聖斗は
暫くの間
頭を抱えながら下を向き
微動だにしなかった。


そして、数分後
顔を上げた聖斗は私を凝視し
「美羅は、知ってたのか?」
と、低く掠れた声で聞いてきた。


「うん…」

「いつからだ…
いつから知ってた?」

「…家出する…前の日…」


充血した鋭い目が、私を睨みつける。
怒りが溢れ出ているよう…


「知ってて、黙ってたのか?」

「ごめん…」

「今まで言おうと思ったら
言う機会は、いくらでもあったはずだ…
それでも黙ってたワケを聞かせろ」


それは、今まで見たこともない
聖斗の憎悪に満ちた顔だった。


「…言おうとしたよ…
でも、聖斗が理絵さんを抱いてるの見て
言っても仕方ないって
私、投げやりになってた…

でもね、今は言わなかったこと
後悔してる。
聖斗の気持ち考えたら
言うべきだった…

本当に、ごめんなさい…」


バタン!!
カシャーン…


聖斗が立ち上がったはずみで
テーブルの上のワイングラスが倒れ
真っ白なテーブルクロスを
深紅の色に染めて行く


でも、そんなものなど目もくれず
聖斗は、テーブル越しに
私の胸ぐらを掴むと
力一杯、引き寄せる。


「ふざけやがって…
俺が、どれだけ苦しんできたか
美羅なら、分かってたはずだ!

お袋の本当の子とか
そんなことは、どうでもいい!

薫叔母さんの子じゃねぇってことが
俺にとっちゃ、大事だったんだよ!

美羅と…
兄妹じゃねぇってことが…
何より…も…」

「せい…と、ごめんね…」


謝罪の言葉以外
何を言っていいか、分からない…


私を掴む
聖斗の手が震えてる。
そこには、呪縛から解放された喜びなど
微塵も感じられなくて
怒りと悲しみのみが窺える。


そして…
聖斗の口から
私に投げかけられた言葉は…


「美羅…お前が…憎い…」だった…

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