ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
12月24日
結婚式当日
式は午後3時からなので
私と優斗は午前中に市役所に向かい
婚姻届を提出した。
「おめでとう御座います。
婚姻届は受理されました」
職員の人に笑顔で報告を受けても
私は、ちっとも笑えなかった…
なぜか何もかも終わった様な…
複雑な心境
もっと感動するものだと思ったのに…
ふと、聖斗の"人生を捨てた…"
という言葉を思い出し
彼が入籍した時
どんな想いだったのだろうと
そのことに
まったく気付くことが出来なかった自分は
なんてバカだったんだろうと
まだ降り止まぬ粉雪舞う空を見上げる。
今日から私は
"大原 美羅"
優斗の妻なんだ…
そして、そのまま教会に行き
純白のドレスを身にまとう。
メイクが終わり、髪がセットされると
罪深い私の心を覆い隠す様に
長いベールがフワリと掛けられる。
智可と恵美里が来てくれて
「おめでとう」と、私の手を握ってくれた。
でも、智可の瞳は
私の心を見透かす様に
微かに揺れていた…
「チャペルで待ってるね」と、明るい声を残し
2人が出て行くと
今まで江川美羅として生きてきた22年間の思い出が
次々と脳裏を過る。
幼かった頃の夢
"お嫁さんになること"
そう…
初恋だった優斗のお嫁さんになることが
私の夢だったんだ…
その夢が叶おうとしてるのに
どうしてこんなに、切ないんだろう…
「そろそろ、お時間です」
係の女性の差し出された左手に
そっと、自分の右手を乗せる。
ゆっくり、ゆっくり歩みを進め
見えてきたのは
大きな扉
その扉の前に立ち
微笑みながら私を見つめる伯父さん。
私には、一緒にバージンロードを歩いてくれる
父親は居ない。
花嫁姿に涙してくれる
母親も居ない…
ても、きっと見てくれてるよね。
パパ、ママ
今日、私は結婚します。