ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
兄貴の嫁さん…か…
「なんだ、そうなんだ!
でも、大学時代、大原君が少し付き合ってた女の子に
雰囲気似てるんじゃない?」
アッケラカンと
そう言って笑う店員さん。
「…付き合ってた女の子…ですか?」
「そう!1年の時だったかな?
よく見ると、顔も似てるかも…」
すると聖斗は、焦った様に
私の持ってた買い物カゴを奪い取ると
「余計なこと言ってねぇで
さっさと清算しろ!」
と、カウンターにカゴを放り投げる。
「ちょ、ちょっと…聖斗!」
「ほら!行くぞ!」
商品の入った袋を乱暴に持つと
有無を言わさず
私の手を引き
ベビーカーを押しながら
ドラックストアーを出た。
「待ってよ!聖斗…
ねぇ、なんで聖斗がここに居るの?
仕事はどうしたの?」
私がそう言うと
聖斗は、やっと立ち止り
ゆっくり振り返る。
「あ、あぁ…
最近、この近くに小児科の医院が開業してな
患者さんにウチの薬局紹介してもらおうって思って
挨拶に行ってた。
で、大学時代、同じ学部だったヤツが
ここの店に転職したって聞いてたから
ちょっと、覗きに来てやったのに…
アイツ、余計なこと
ベラベラ喋りやがって…」
「余計なことって、聖斗の元カノのこと?」
バツが悪そうに
咳払いをすると
聖斗は「昔のことだ。バカバカしい」
と、吐き捨てる様に言う。
私に似た彼女のことは
今の聖斗には、どうでもよくて
バカバカしいことなんだ…
そして、きっと、私のことも…
「そうだよね…昔の彼女のことなんか
今更、言われたくないよね…
じゃあ、私、そろそろ帰るね。
瑠菜ちゃんのミルクの時間も近いし…
お仕事、頑張って」
聖斗の顔を見ることなく
俯きながら笑顔を作り
私はベビーカーを押して歩き出した。
すると、さっきまでご機嫌だった瑠菜ちゃんが
グズりだす。
あぁ…お腹すいたんだ…
急がなきゃ…
慌ててベビーカーを押し出した時だった…
私の腕を掴み
放そうとしない聖斗。
「待てよ…美羅」