ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

木曜日
智可は約束通り、朝9時にマンションに来てくれてた。
聖斗には
今日は智可が遊びに来るから
お昼休みには会えないとメール済み


私は、直ぐに出られるよう用意をし
智可と2人で理絵さんを待つ。


いつも10時には瑠菜ちゃんを預けに来る。
その日も10時前に玄関のチャイムが鳴った。


「じゃあ、瑠菜のこと
お願いね」

「…うん」


ドキドキして、笑顔が引きつってしまう…


部屋の奥に居た智可に瑠菜ちゃんを預け
理絵さんがエレベーターに乗ったのを確認すると
私はダッシュで階段を駆け下りる。


私がエントランスに着いた時
理絵さんは、丁度マンションの玄関を出て行くとこだった。


荒い息を抑え
少し距離を取りながら
彼女の後ろを着いて行く。


駅へ行くんだ…


出勤ラッシュが終わった駅は
人もマバラで、私は理絵さんに見つからない様に
細心の注意を払い
電車では隣の車両に乗り込む。


理絵さんが降りたのは
4つ目の駅
隣街の中心街だ。


歩くこと10分。
理絵さんが向かったのは
俗に、ピンク通りと呼ばれ
風俗の店が建ち並ぶ
異様な雰囲気のする場所だった。


帰りたい…

そんな気持ちを抑え
更に、理絵さんに着いて行くと
一軒のお店に躊躇することなく入って行った。


ここって…キャバクラだよね…
理絵さん…
まさか、ここで働いてるの?


周りのお店はシャッターが下りているのに
このお店だけは、看板の電気が点いていて
営業してるみたいだ…


お店の前まで来て
恐る恐る覗いてみたけど
もう理絵さんの姿はない。


でも、入口の店名の下には
『美人人妻と秘密のひと時…』って…


なんだか、急に怖くなってきて
戻ろうとした時
野太い声に引き止められた。


「お嬢さん
ウチの店になんか用?」


振り返ると
40代くらいの黒いスーツを着た男性が
薄ら笑いを浮かべ立っている…


鋭い眼光で見つめられ
私の体は金縛りにあったみたいに
固まってしまい
足が前に進まない…


「この仕事に興味あるの?」



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