ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「い…いえ、私は…」

「いいんだよ。
誰にでも事情があるんだ。
良かったら、1日体験してみる?」

「結構です。
ホントに違いますから…」


必死で拒否したのに
その男性は、私を品定めするみたいに
頭のテッペンから足のつま先まで
何度も視線を上下させる。


「そう?残念だな…
何も怖くないんだよ。
お触りナシだし
楽しく会話するだけでいいんだけど…

君くらいの女の子も沢山居るよ」


今度は優しそうな声で
微笑んでくる…


そうだ。
理絵さんのこと聞いてみよう…



「あの…今、女の人が入ってくの見たんですけど
あの人も
ここで働いてるんですか?」

「えっ?あぁ、まあね。
彼女はウチのNO1
人妻には見えないだろ?

この店の女の子は、一応、全員人妻だから
昼間に営業しててね
客は外回りの多い営業マンとか
年上好きの学生とか若い人が多いから
楽しいよ。

君も人妻みたいだし
どう?働く気…ない?」


そう言って
私の左手の薬指を
マジマジと見つめ
ニヤリと笑う。


ゾクッ…


「ホントに…興味ないですから…
ごめんなさい」


私は、やっとの思いで
そう言うと
全力で走り出す。


背後から
「その気になったら、いつでもおいでー」
と、男性の声


心臓がバクバクいってる…


なんとか駅まで戻り
何度も深呼吸をし
気持ちを落ち着かせる。


怖かった…

でも、やっぱり理絵さんは
キャバクラで働いてるんだ…


瑠菜ちゃんが居るのに
昼間っから男の人とお酒飲んで
イヤラシイことしてるんだ…


聖斗が好きなんて、嘘ばっかり!
許せない…




でも…
これは、切り札になるかも…



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