ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「私が彼の誕生日に再会した時
優斗さんは、証券会社に寄った帰りだと言ってました。
…優斗さんが株をやってたの
知ってましたか?」
「株…?」
そう言えば、優斗の書斎に
そんな雑誌があった…
「彼、私が騙されて肩代わりしてくれた借金の返済を
株の利益で支払ってたそうです」
「そう…なんですか…」
知らなかった…
「給料に手を付ける訳にはいかないからって…
美羅さんに知られたくなかったんでしようね。
毎月、5~6万ほど儲かっていたみたいで
返済には十分だったそうです。
でも…」
「でも?」
由香さんは、膝の上のおにぎりを握りしめると
苦悩の表情を見せる。
…借金の返済が半分ほど終わった頃だったそうだ。
証券会社の担当者が
もっと大きな利益が出るモノがあると
優斗に進めてきた。
早く借金を返し終えたいと思ってた優斗は
担当者の言葉を信じ
その人に言われるまま
ある取引の契約をする。
先物取引…
手元に現金が無くても
参加できるシステムになってて
自分が買った商品の相場が上がれば
大きな利益が得られる。
でも…
値が下がれば、大損。
そして、その損失を数日の間に支払わなければならない。
ハイリスク、ハイリターンの
マネーゲーム
そして
値が下がることは無いと言われ
安心してた優斗に
思いもよらぬ知らせが…
「優斗さんが買った商品の相場が
暴落したって…」
「えっ?」
「それで、買い付けた商品の代金と
損失分を支払わなくちゃいけなくなった…」
「支払い金額って…全部でいくらだったんですか?」
恐る恐る聞いた私に
由香さんは顔を上げ
「800万です」
と、答えた。
「…800万?そんなに…?」