ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「理絵さん…どうしてここに?」
「私にとっも大切なお義兄さんですもん。
心配で来たのよ。
それに、マンションの廊下で
こんな物拾っちゃったのよね」
そう言って、一枚の紙を広げて見せる。
「これは…」
私が落とした督促状…
「必要無かったかしら?」
「う…うぅん。有難う、理絵さん!!
探してたの
これで振込先が分かる…」
理絵さんの手から督促状を受け取ろうとした瞬間
彼女が手を引っ込める。
そして
私の耳元で「話しがある」と微笑んだ。
「話しって、なんですか?」
エレベーターホール横の喫煙室に場所を移し
タバコに火を点ける理絵さんを不安気に見つめると
彼女は浅い笑いを浮かべ
白い煙を細く吐き出す。
「交換条件よ」
「えっ?」
「300万貸す代わりに
聖ちゃんを諦めてくれる?」
「……!!」
「タダで貸してもらおうなんて
図々しいんじゃない?」
それは、私にとって究極の選択
優斗を助けたい。
でも…聖斗を失うなんて、耐えられない。
「どうするの?
コレには、今日中に振り込まないと
全ての財産が差し押さえられるって書いてあるわ
そうなったら
お義兄さんもおしまいね!
社会的信用も無くなって
お義父さんの薬局の評判もガタ落ちだ」
「そんな…」
「私、ここに500万持って来てるの。
なんなら、全額貸してあげてもいいわ。
アンタがバカにしたキャバクラで稼いだお金よ。
そんな汚いお金借りたくないって言うなら
私はこのまま帰るけど?」
タバコをもみ消し、立ち上がろうとした理絵さんの腕を
私は咄嗟に掴んでいた。
「そのお金…
私に貸して下さい。
聖斗とは…別れ…ます」
今は、あれこれ考えてる時間は無い。
優斗と家族を救うことが最優先だった…
「そう…じゃあ、今すぐ聖ちゃんに電話して
別れるって言ってちょうだい」
「今…すぐに?」
「出来ないの?」
「いえ…」
理絵さんの険しい眼差しを受けながら
私は携帯を取り出した。