ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

呼び出し音が悲しく耳に響き
聖斗が電話に出ないで欲しいと願う

でも…


『はい、美羅か?』

「聖斗…」

『兄貴の具合はどうだ?』

「優斗は大丈夫だよ。
伯母さんの手術は?」

「あぁ、さっき終わった。
成功したから心配ない」

「そう…良かった」


ホッとしたのもつかの間
理絵さんが急かす様に私を睨みつけてる。


「それと…聖斗…」

『んっ?』

「私と…」

『うん?』

「…別れて…欲しいの…」


暫しの沈黙の後
冷静な聖斗の低い声が耳に届いた。


『…何があった?美羅』

「何も無いよ…
ただ、もう聖斗とは一緒には居られない
私は優斗の妻だから…」


それだけ言うと
私は携帯を切り、必死で涙を堪える。


「それでいいのよ。
約束通り、この500万はアンタに貸してあげる」


理絵さんは満足気にそう言うと
私の膝の上に分厚い茶封筒を放り投げてきた。


「もう時間無いわよ。
銀行に行った方がいいんじゃない?」

「あ…」


悲しみに浸ってる時じゃない…


私は由香さんに優斗のことをお願いして
伯父さんと銀行に急ぐ
なぜか理絵さんも一緒だ…


銀行のカウンターで
現金500万と、黒木さんから渡された通帳と印鑑を差し出し
「全額を、ここに振り込んで下さい」と告げる。


窓口の女性行員が手続きを始めた時
私の携帯が鳴り出した。


聖斗なら出ないでおこうと思った
でも、それは恵美里からだった


「あ、恵美里…ごめんね。
探してた督促状見つかったの
今、銀行で振り込みの手続きしてもらってる」


すると、耳を劈く様な恵美里の叫び声がして
私は思わず携帯を落としそうになる


『ダメーッ!!美羅、振り込んじゃダメ!!』

「な、何?」

『とにかく、振り込んじゃダメなの!!』


私は訳分からず戸惑いながらも
振り込みを待ってもらうよう
女性行員に伝え
恵美里に、その真意を訊ねると…


携帯から聞こえてきたのは
男性の声だった…




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