ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「だから私じゃなく
由香さんと心中しようと思ったの?」


優斗は困った様な表情をすると
一呼吸置いて話し出す。


「由香は俺と一緒に死ぬ気だったと思うが
俺は初めから、1人で死ぬつもりだった。
心中なんかしたってことになったら
美羅が可哀想だもんな」

「優斗…」

「車で山に行って
睡眠薬を飲んだんだ。

由香には、通常より少し多め
致死量には満たない分を渡した。

一応、薬剤師だからな
どれだけ飲めば危ないかくらい分かってた。

由香が眠ったのを確認して
残りの薬を、俺が全部飲んだ。

ただ、予想外だったのは
思ったより早く発見されたことかな…」

「優斗…そんなこと言わないで…
助かって、ホントに良かったんだから…

でも、由香さんが入院するほどじゃなかったのは
そう言う訳だったんだね」


コクリと頷いた優斗が
私に視線を向けた。
その思いつめた様な表情にドキリとする。


「美羅…ごめん。
俺、由香が好きなんだ…
誰よりも、由香が…」

「分かってるよ、優斗」


その気持ちは、私にも分かる。
だって、私も…


「美羅、お前にも
忘れられない男が居るんじゃないのか?」

「えっ?」

「俺が付き合ってくれって言った時
美羅は忘れられない人が居るって言ったよな?
始めは、あの黒木さんだと思ってた。
でも…違うよな?」


優斗…まさか、知ってたの?


優斗は目は、決して私を責めてるものじゃなかった。
哀れむ様な、心配してくれてるみたいな目


「あの日、気付いたんだ…」

「…あの日って?」

「俺たちの…結婚式の日」

「……!!」


優斗は全てを知ってて
私と暮らしてたってこと?

何もかも承知の上で
あんなに優しくしてくれてたの?


「美羅は、誓いの言葉を中々言わなかった。
そして、俺を見ることなく
『誓います』と言った時
美羅の視線の先に居たのは…」

「知ってたのに…
どうして…黙ってたの?」

「…自分と同じだったから…かもな」


それは、お互いが
本当に好きな人を忘れる為の結婚だったから…?




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