ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
なんて間が悪いんだろう…
理絵さんの怒り狂う顔が目に浮かび
思わず体が竦んでしまう。
でも…
静かに開いたドアから出て来たのは
理絵さんではなく
見たことも無い若い男性
誰?
すると、その男性が私たちに気付き
驚いた様に目を見開いたが
直ぐに表情を戻し
何を思ったのか、大きく口角を上げる。
「お前は…」
聖斗の小さな声が聞こえたのと同時に
その男性が
「お久しぶりです。大原先輩」
と、ニヤリと笑った。
大原…先輩?
この人、聖斗の後輩なの?
「お元気でしたか?先輩。
相変わらずモテてますね。
でも、ちょっと大胆過ぎませんか?
自宅の横の部屋で不倫とは
常識無いですよ」
まったく臆することなく
聖斗に挑発的な態度をとる男性
「理絵の男って、お前だったのか?」
「男…?
嫌だなぁ~、僕は理絵ちゃんの相談にのってただけですよ。
先輩みたいに不純な関係じゃない」
「何?」
この状況でも、平然と理絵さんとの関係を否定する男性に
聖斗は苛立ちを隠せない。
「そうだ!
いい機会ですから
少しお話しさせてもらえませんか?」
「なんの話しだ?」
「…瑠菜ちゃんのこと…ですよ」
瑠菜ちゃんの名を聞いて
聖斗の顔色が変わる。
「分かった…」
私の肩をポンポンと叩き
聖斗は男性とエレベーターの方に歩き出した。
「聖斗…」
「部屋に居ろ。すぐ戻る」
思いもよらぬ展開に
私は戸惑いながら2人を見送り
聖斗の帰りを、ひたすら待つ。
とにかくジッとして居られなくて
部屋の中を歩き回っては
数分置きに時計を見上げていた。
そして、2時間後…
ピンポ~ン…