ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

人気の無い階段の踊り場
彼女は早口で話し出す。


「大原先輩って、彼女居る?」

「さぁ…」


ワザと何も知らないフリをする。


「アンタ、先輩のなんなの?」

「イトコです」

「…イトコ…そう。
まさか、アンタ先輩と付き合ってるとか、ないよね」

「付き合ってません…」


これは本当のこと…


それを聞いて安心したのか
3年女子は
聖斗のアドレスを教えてほしいと言ってきた。


「知ってるんでしょ!
教えなさいよ」


そんなの無理。
聖斗に黙ってそんなの教えたら
今度は何を言われるか…


今の私と聖斗の最悪な状況で
勝手に教えたのが知れたら…
考えるだけで怖い


「私は教えられません…
直接本人に聞いて下さい…」


彼女の顔色が変わった。
凄い怖い目で
私を威嚇する。


「ナマ言ってんじゃないよ!!
素直に教えればいいんだよ!!」


イヤだ…
こんな人に絶対、教えたくない。


私も負けずに
彼女を睨みつける。


「なんだよ!その目は?
気に入らない…」


胸ぐらを掴まれ
振り上げられる腕


ひっぱたかれる…
そう思い、硬く目をつむり
顔を伏せた…


パチーーン…

静まり返った踊り場に
乾いた音がこだまする


「うっ…」


叩かれた反動で
よろめき足が宙に浮く


このまま倒れるんだと思った…
でも、次の瞬間
私の体を誰かが抱きとめてくれた。


…誰?


「何やってんだよ!!」


えっ…?


「江川に何しやがる!
先輩だからって
こんなことしていいと思ってんのかよ!!」

「上杉…君」


叩かれた左頬の痛みも忘れるくらい
ドキッとした。


この時の彼は
今まで見たこともない真剣な顔をしていた。
その横顔が
凄く頼もしく見えて
縋る思いで彼の制服の袖を握り締めていた…


何?
なんなの?
この感じは…


今、私
上杉君を…





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