ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

上杉君の出現で
すっかり大人しくなった3年女子は
「大原先輩にこのこと言ったら
ただじゃおかないからね!」
と、悔しそうに舌打ちをすると
階段を駆け下りて行く。


「大丈夫か?江川…」

「うん…ありがと」


私をゆっくり階段に座らせると
叩かれた頬に
そっと手を当てる上杉君


ひんやりとした感覚…
心配そうに私の顔を覗き込む
優しい瞳


「痛いか?」

「ちょっとだけ…」

「すまない…」

「…どうして上杉君が謝るの?
助けてくれたのに…」


不思議なことを言う上杉君に
疑問を投げかける。


「江川が叩かれる前に
助けようと思ったら
助けられた…
お前たちの話し…聞いてたんだ…」

「上杉君…」

「誰だよ!大原先輩って
なんで、そいつの為に
江川が叩かれなきゃいけねぇんだよ」

「それは…」


すると、階段の下から
話し声と足音が近づいてくる…


「あっ?美羅じゃない…
何してるの?こんなとこで…」


現れたのは、智可と恵美里


「…あれ?
もしかして…マズいとこ来ちゃった?」


私と上杉君の
只ならぬ様子に気付いた智可が
引きつった笑いを浮かべ
私たちから距離をとる。


「…うぅん。そんなことな…い。わっっ!!」


突然、上杉君が私の腕を掴み
立ち上がる。


「来い!!」

「えっ…何?」

「いいから、来いよ」


一気に階段を駆け上がる上杉君に
足をもたつかせながら引っ張られていく私…


「み、みらぁーー」


智可たちの声が遠くなる…


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