ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「ん…でも…」
智可は眉をひそめ
"余計なこと言うな"とばかりに
隣の恵美里のわき腹を、突っつく。
「あ…まずかった?」
「ホント、一言多いんだよねー
恵美里は…」
そう言いながらも
智可は話してくれた。
中学3年の1月
その日は、今年一番の冷え込みで
朝から雪が降って
とても寒い日だったそうだ…
上杉君の彼女の誕生日
2人はデートの約束をして
駅前で待ち合わせしてた。
でも、どれだけ待っても上杉君は来なくて
それでも彼女は雪の中
ずっと、上杉君を待ち続けていた。
結局、上杉君は現れず
彼女は2時間以上待ち続け
元々、風邪気味だった彼女は
高熱を出し
肺炎になって入院する騒ぎになったそうだ。
なのに、上杉君は
一度もお見舞いに来なかったどころか
やっと退院してきた彼女を
あっさりフってしまった。
「1回えっちしたら
もう興味ないって、言ったとか…
その後、彼女がショックで
不登校になったみたいで…
自殺未遂したって噂もあった」
「うそ…」
「…あくまでも噂だから…
そういうの
皆、面白おかしく言ったりするじゃない。
気にすることないからね」
智可はそう言って笑ったけど
私は笑えなかった。
私には、あんなに優しい上杉君が
そんな冷酷なことする人だなんて…
確かに、出会った頃は
酷いことばっか言って
嫌いだったけど…
今の話しを
完全に否定できない自分が
情けなかった。
「上杉君、美羅と付き合って
ホントに変わったのかもね。
最近の彼
顔つき昔と違うし…
よく笑う様になったもん」
恵美里のフォローも
私の不安を取り除くことは
出来なかった…