ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
それから数日後…
私はある人に呼び出され
駅前の喫茶店に居た。
学生の私が入るのに躊躇しそうな
落ち着いた雰囲気のお店
小さく区切られ
他のお客さんとは
隔離された空間で
私はその人物と向き合っていた。
「悪いけど
あなたのこと調べさせてもらったの…」
その女性は
手元の紙に視線を落とし
表情を変えることなく
淡々と話し出す。
「ご両親が亡くなって
母親の姉、伯母の家で暮らしてるのね」
「…はい」
「…薬局経営…息子が2人
どちらも薬学部…
家柄としては悪くない…」
そう、彼女は
上杉君のお母さん
「でも、あの子は父親の後を継いで
政治家になってもらうの
変な噂がたつのは
迷惑なのよ」
「噂…ですか?」
「そう。
あなたたちが
ああいうことして
万が一、妊娠なんてことになったら
淳君の将来は無くなる。
それに、来月の市長選
主人は立候補する予定なの。
問題を起こされては困る…」
妊娠に市長選…
私にはピンとこない…
「あなたの伯父さんが所属してる薬剤師会は
対立候補を支持してるわ。
あなたと淳君が付き合ってるとなると
その伯父さんにも迷惑がかかるんじゃない?」
「えっ…?」
「あなたと淳君のことが
他の会員の方に知れたら
さぞかし伯父さんも
肩身の狭い思いされるわね…
お気の毒だこと」
伯父さんに
迷惑がかかる…?
そして、上杉君のお母さんは
小さく咳払いをすると
これは上杉君は知らないことだと前置きして
再び口を開いた。
「淳君の結婚相手は
もう、決まってるのよ」
「……?!」