ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
これが、私の下した決断
ごめんね…上杉君
本当は、別れたくなんかない。
ずっと、ずっと側に居たかった。
あなたには
沢山の愛を貰ったね。
私はその愛に支えられ
今、この時まで幸せでいられた。
でも私は
あなたに何もしてあげられなかった気がする。
もっと気の利いたお返しができたら良かったのだけど
これが今の私に出来る
精一杯のこと…
次の日のお昼休み
いつもの様に、私の教室にやって来た上杉君。
向かい合って座ると
普段と変わらず
お弁当箱を机に置く。
気だるそうにお弁当のふたを開けた彼の反応は
私の想像通りだった…
驚いたんだろう
一瞬、動きが止まり
目を見開く。
そして、ほんの少しだけど
彼が微笑んだ様に見えた。
「今日は手作りだね…」
「あ、あぁ…」
「美味しそう」
「……」
暫く、そのお弁当を眺め
箸をつけるのをためらっている様子
「最後の日に
お母さんの手作りのお弁当なんて
良かったね」
「今更、何考えてんだか…」
口ではそんなこと言ったけど
上杉君の顔は
嬉しそうにほころんでいた。
その笑顔を見れて
私はもう
思い残すことはない…
そう思ったんだ…
そして放課後
誰も居なくなった教室で
私は上杉君に別れを告げた。
もちろん
彼がすぐに納得してくれるはずはなく
長い話し合いが続いた…
「母さんのことで
美羅に辛い思いさせたのは分かる。
でも、なんで別れなきゃいけねぇんだよ」
上杉君は
私とお母さんが会ったことを知らない…
「もう卒業だし
会えなくなるし
お互い、その方がいいと思う…」
「離れても会いに行く。
約束したよな!
ずっと、側に居るって…
忘れたのかよ」
忘れてなんかない…
でも、どうしようもないんだよ。
分かって…上杉君…
そして私は意を決し
残酷な言葉を
あえて口にした…