ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
聖斗の熱い吐息が
私の体を硬直させる…
間違いなく私は
次の言葉を期待していた。
私のことを"好き"だと言ってくれるのを…
上杉君と
あんなに辛い別れをしたばかりなのに
自分で自分が分からない。
でも、聖斗に抱きしめられて
気付いたんだ…
聖斗の艶のある黒髪
細くても力強い腕
低くて、よく通る声…
上杉君に似てる…
うぅん。
違う…上杉君に似てるんじゃない。
上杉君が、聖斗に似てるんだ…
私は上杉君に
聖斗を重ねてたのかもしれない。
聖斗とは果たすことができない
もどかしい想いを
上杉君で埋めようとしてたのかもしれない…
私が求めていたのは…
ずっと、聖斗だったんだ…
やっと知った自分の本当の気持ちに愕然とする。
だから、尚更…聞きたい…
聖斗…
聞かせて…
あなたの口から
あなたの本心を…
「私のこと…
ずっと、何?」
「……」
「聖斗?」
聖斗の腕が、スルリと離れていく…
「…悪い。なんでもない…」
えっ?
私は振り返り
聖斗の顔を困惑した面持ちで見つめた。
「なんでもないって…
聞かせて?
聖斗の本当の気持ち
聞かせてよ」
「美羅…」
「お願い…聞かせて!」
私は堪らず
聖斗のジャケットを握り締めた。
それと同時に
私の体を包んでいたタオルケットが
ソファーの上にゆっくり滑り落ちていく…
でも、そんなことさえ
気にならない位
私は聖斗のその、最後の一言が聞きたかった。
咄嗟に目を伏せる聖斗
なぜ?
どうして私を見てくれないの?
「美羅、服着てこいよ…」
「ヤダッ!!
私を見て…聖斗…」
この時
既に私たちは
足を踏み入れていたのかもしれない…
禁断という
闇の世界へ…