ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】
「私が小学生だった時
海で聖斗に助けられた時のこと…」
見上げた聖斗の顔は
はにかんだ様な照れ笑いを浮かべていた。
「あぁ、覚えてる。
あの時の俺、ガキのくせに
偉そうにこと言ったよな…」
「嬉しかった…
私、あの時から
聖斗のこと、ずっと好きだったのに…」
「嘘つけ!
な、ワケねぇだろ?」
そう言うと
聖斗はポケットから
クシャクシャのタバコの箱を取り出し
歪んだタバコを指で伸ばしだす。
「美羅が好きだったのは
兄貴だろ…?」
「う…ん。
確かに優斗のことは好きだった。
でも、あの日
聖斗に助けられた日から
私は聖斗が好きになったんだよ」
綺麗に伸びたタバコをくわえた聖斗は
火を点けることなく
話し出す。
…あの日の夜中
私が心配で眠れなかった聖斗は
こっそり私の部屋を覗きにきたそうだ…
疲れて、すっかり熟睡してる私を見て
安心した聖斗が帰ろうとした時
私が寝言を言った。
「『優斗…助けて…』
美羅は、確かにそう言った…
それ聞いて
さすがにヘコんだよ。
そんで、思ったんだよ。
兄貴のことがそんなに好きなのに
あんなこと言って
美羅を苦しめたんじゃないかって…」
「…だから次の日
聖斗の部屋へ行った時
優斗のとこへ行きたいんだろって言ったの?」
「俺に遠慮して
兄貴のとこへ行けねぇんじゃないかって
思ってさ…」
知らなかった…
だから聖斗は
あの日以来、私に素っ気無かったんだ…
全て、聖斗の優しさだったんだ…
「じゃあ、聖斗は
私のこと嫌ったんじゃないんだね?」
「まあな…」
もっと早く知りたかった…
知ってたら
こんなに辛い思いしなくて済んだのに…