ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

「美羅…お前…」


暗闇の中でも
聖斗の驚いている様子は
なんとなく分かった。


私の頬に添えられていた手のひらは
微かな体温を残し
一瞬にして離れていった…


「起きてた…のか?」


私は体を起こし
ベットの上に座ると
「うん」と、小声で返事する。


「今日だけじゃないよ…
昨日も、一昨日も…起きてた」


ベットの横に
崩れる様に座り込んだ聖斗が
うな垂れ、大きくため息をつく


「聖斗は私のことなんて好きじゃないって思ってた。
でも夜中にこっそり部屋に来て
こんなことする…
聖斗の考えてること
分かんないよ…」

「……」


私に背を向け
微動だにしない聖斗


「聖斗、答えてよ。
私に優しくしてくれたのは
ただの同情なんでしょ?

彼氏と別れて落ち込んでたから…
だから…」

「美羅…」

「私が聖斗のこと好きだって知ってて
気がある素振りなんて酷いよ…」


すると、聖斗は振り向き
「そんなんじゃない…」と、囁く様な小さな声で呟く。

「うそ!!
ねぇ、聖斗…聖斗のそんな態度を
なんて言うか知ってる?

残酷な優しさって言うんだよ…」


私は、上杉君を思い出してた。


上杉君を好きだと雪の中で待ってた子に
彼は、決して優しさを見せなかった。


でもそれは
上杉君の本当の優しさだったんだよね。
付き合う気もないのに
期待を持たせて
傷つけたくない…


不器用だけど
私はそんな上杉君の方が
今の聖斗より
ずっと、男らしいと思った。


「残酷…?俺が?」

「そう…」

「その言葉…
美羅らしくないな…
誰かの受け売りか?」


私は、臆することなく
聖斗を見つめて言った。


「そうだよ…
上杉君に、教えてもらったの」

「上杉?誰だよ、それ」



「私を…女にしてくれた人だよ…」

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