【童話シリーズ第2弾】人魚姫
山のような波が襲いかかると、船は真っ二つに裂けてしまいました。
何もかもが、暗い恐ろしい海に投げ出されます。
「王子様を助けなくては」
人魚姫は波にさらわれそうになりながら、王子様を探しました。
海に沈みかけた王子様は真っ青な顔をして、目を閉じていました。
体も冷たく、ぐったりとしています。
「どうか目を覚ましてください、王子様」
人魚姫は王子様を助けて、一生懸命泳ぎました。
やっとのことで岸に着きましたが、王子様は目を開こうとしません。
人魚姫は貝殻に水をくんで王子様に飲ませたり、背中を撫でたりしました。
一晩中付きっ切りで必死に介抱し、いつの間にか朝日が差し込んでいました。
すると、ようやく王子様は目を覚ましました。
「あなたが助けてくれたのですね?」
王子様は人魚姫に向かって、微笑みかけました。
人魚姫の尻尾には気付いていません。
その時、近くの教会で鐘がなりました。
お祈りを済ませた人々が次々に出てきます。
人魚姫は王子様の頬にそっとキスを落とすと、急いで岩陰に隠れました。